中国経済のアキレス腱は不動産・金融バブル?

2013年9月18日 11:00

2013年7月29日の中国証券報によると、「中国国土資源部法律センター」発表の、中国土地市場の景況感をしめす中国土地市場指数(CLI)は、再び上向き始め過熱気味とのことです。


中国不動産市場の高騰と活況は近年、世界中の投資家から注目され、やや過熱気味との懸念も出ていました。その後中国当局は、2010年から「新国十条」、「新国五条」、「新国八条」等の不動産価格高騰を抑制するための各種引き締め策を打ち出し、その効果もあって、不動産価格は安定してきました。しかし、ここにきて、中国土地市場が再び過熱気味となっていることが、中国内部から発表され、不透明な中国不動産市場では、バブルが崩壊するのではないかという懸念が再び持ち上がってきたのです。


バブル崩壊といえば、1990年代の日本の土地神話を中心としたバブル崩壊、サブプライム・ローン問題が引き金となって住宅バブルが崩壊した米国のリーマン・ショックが代表的なものです。これらはいずれも、不動産を所有するための資金を、金融機関が無造作に融資した結果、引き起こしたものです。しかし、中国では、私的な土地所有は認められていません。したがって、中国の不動産投資・投機とは、建物の価格+土地使用権(日本における「定期借地権」)が、市場を形成する源泉となっている点で、日本や米国とはやや状況が異なっているといえるでしょう。


つまり、自分達の住居として購入する以外の不動産の大半は、転売もしくは賃貸用不動産として所有することが主要な目的となっています。不動産を通じた蓄財、純粋に利益を得るための購入です。日本におけるバブル形成の主要因の1つは、転売目的の不動産所有でしたから、この点では、ほぼ中国の不動産投資は、1980年代の日本の不動産バブルと似た様相を呈しているといえます。
このような、転売目的の不動産所有を抑制したのが、「新国十条」、「新国五条」、「新国八条」での引き締め策だったのですが、その効果が剥落・減退してきた可能性が高まってきました。その背景にあるのが、住宅を担保にして借りた消費ローンが、回りまわって2、3件目の住宅購入資金に充てられるという「灰色房貸(住宅貸付)」という変則的な方法や、正規融資をする銀行以外の金融機関や企業からの融資を受けるシャドーバンキングが横行しているからだといわれています。特に注目すべきは、このシャドーバンキングです。これが中国経済を崩壊に向かわせる主要因になるかもしれないのです。


シャドーバンキングとは、シャドーバンク(影の銀行)と呼ばれる「影の銀行」です。シャドーバンキングが多くなってきたのは、中国政府が不動産市場高騰の抑制策によって、中国の主要銀行の資金量が大幅に減少し、一般の事業目的でもお金を借りることが難しくなったことが原因です。シャドーバンキングは、個人の不動産投資はもちろん、一般企業、中国の地方政府の公共事業や住宅開発などでも、広く活用されています。しかし、シャドーバンクの中には、高金利で貸し付けている金融業者(日本でいる闇金)も多く存在するといわれています。健全な審査を経て融資実行されるのではなく、審査でNGだった案件に対して貸し付けているわけですから、当然貸し倒れの危険性も高いものが多い筈です。したがって、貸し倒れによるシャドーバンクの倒産や破綻が増えてくれば、それは中国経済そのものへの打撃となるのは必至です。

不動産投資のバブル崩壊を懸念して行った金融引き締め策の結果、地方財政の隅々に影響を及ぼすようになったシャドーバンクが生まれたことは、もはや中国経済が中国政府当局では、コントロールできない状況になったということもできるでしょう。不動産・金融バブルの崩壊は、まさに時間の問題ということがいえるのではないでしょうか?


では、中国発の金融危機が発生した場合、どのようなことが起こるでしょうか。世界有数の規模となった中国の主要各銀行が、大きく資本を毀損することは間違いありませんが、日米欧の金融機関と有機的に結びついているものではないことから、世界的な危機に発展するリスクは少ないといえるでしょう。さらにいえば、中国は貯蓄率も高く、経常黒字や巨額の外貨準備金等も有していることから、危機感を和らげ、長い時間をかけながら、軟着陸をすることもできます。この点では、日本の1990年代以降と同様です。しかし、不透明な中国市場の現状からして、日本以上に長い時間を要することになると思われます。

また、世界第2位の経済大国のバブル崩壊による実需減少は避けられないですから、日本として、日本企業としてそのための準備は必要です。中国市場に対する過大な期待をするのではなく、中国は、あくまで世界の成長センターであるアジアの1国として捉え、ASEAN諸国やインド、中近東、アフリカ、南米各国の市場にも、注目していくべきではないでしょうか。
もちろん、中国政府の強力なリーダーシップが、このような難題を克服していく道がないわけではありません。不動産バブルの終焉、シャドーバンキングからの脱却、地方財政の健全化等、越えるべきハードルを越え、その期間が景気減速で終わり、再び成長軌道に戻る可能性はゼロではありません。しかし、その道のりは決して楽観できるものではないと思います。
(大坪和博)
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